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自分だけの黒を求めて生きたひと…「長谷川潔」

Category : 現代美術シッタカぶり
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【京都国立近代美術館4F コレクションギャラリー】

約9,300点の所蔵コレクションは入れ替えで公開されている。
この回はモンドリアンの「コンポジション」2点も見ることができた。
それぞれ1916年、1929年に制作されたもの。
斬新などという陳腐な表現で誠に申し訳ないが
往事の人々の反応たるや相当なものだったと想像する。
しばし絵の前で動けなかった。

版画家・長谷川潔の作品に出会えたことは
素晴らしい体験だった。
89歳で鬼籍に入ったのが今から約30年前。
27歳でフランスに渡ってから一度も日本に帰らなかった版画家は
それ故日本ではあまり知られていない。
作品を見た時に心の中にさわさわと動くものがある。
なぜか長谷川潔という作家名がそぐわないほどに
日本人離れした(深くは突っ込まないでいただきたいが)作風と
小さな画面に緻密な世界を作り上げた職人的な手技が
思わず手元にいつまでも置いておきたい気持ちにさせる。
もう一つはどの作品も詩的であること。
“ビロードの肌”と呼ばれる彼だけの黒は
なんと知的で同時に蠱惑的なことだろう。
こんな小さな世界なのにカラダごと吸い込まれてしまうような
魔力を秘めている。

黒い銅版画の美しさは、世界で長谷川潔だけのもの。
あらゆる銅版画を独学でマスターし、超絶技巧と呼ばれた。

真夜中に誰も居ない部屋の机の上で
秘密の寄り合いと囁きが始まる…。
そこにあるのは目に見えないリズム。
風景画もいつの間にか自分が佇んでいるような錯覚をもたらす。
特に静物画は“長谷川宇宙”を明確に表し、
一見軽妙な印象を与えるが、時間をかけて観ているうちに
この黒の“手触り”に囚われてしまう。

第二次世界大戦後は日仏は敵味方となってしまい、
フランス在住の画家たちはこぞって帰国する。
しかし彼には愛するフランス人の妻と子供が居た。
何よりフランスで構築した“自分の世界”から
離れることができなくなった。
これほどに古くて新しい銅版画に執着した
その情熱こそが、
決して祖国の土を踏まなかった理由でもあるのだろう。

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