漆とシナの官能な出会い…「 白子 勝之 exhibition 2 」
Category : 現代美術シッタカぶり


11月4日→11月27日【 eN arts 】
最終日前日にやっと行くことができた大好きな作家の個展。
前回の初個展を見た時の
(レビューは http://den393.blog81.fc2.com/blog-entry-348.html )
さわさわとした衝撃。
果たして今回も僕の心を静かに豊かに満たしてくれた。
漆芸といえば、とにもかくにも京芸(京都市立芸術大学)の出身。
前回の個展では、芸大サッカーの試合にOBで出場、半月板損傷、
そして手術というアクシデントにみまわれ、
松葉杖も痛々しかった白子さんの姿が目に浮かぶ。
漆とサッカーのなんとも無鉄砲な出会い。
冗談はさておき、
白子さんは誰が見てもわかるシラコイズムを踏襲しながら
次なる世界を構想に置いて
2回目となる今回の個展に悠々と挑んだかに見える。
初個展とは思えぬクオリティの高さとセンスに
誰もが舌を巻いた(と思うよ)が
あの(今思えば)多少のエキセントリックさも伺えた造形は
今回こんなにも抑制されて、息を飲むほどに美しい。
元より漆を前面に押し出した作風ではないところにこそ
白子さんの魅力がある。
一つの塊から彫り起こしたとは思えない流麗な離合と
花火を振ったような軌跡がもたらすような一筆の勢いは
白子さんの手に備わった超感覚としか思えない。
シナの慎ましやかな面差しは丁寧に丸みを帯びて
官能的ですらある。


「scatter」シリーズは
意味とするところの「まき散らす・ばらまく」という無計画さよりも
「点々と置かれる」という方の意味がふさわしい、
そこにうっすらと必然を感じさせる整然さが美しい作品たちである。
自然公園のランドスケープを提案化したような
“専門的”な面白さもさることながら、上のモチーフと下のベースの
緩やかな一種独特の関係性が作り上げて、
例によっておしつけがましさのない気持ちよさを漂わせている。
ある作品などは微妙に角度を変えてみると
浮世絵の木版のずれにも似た味わいが感じられ、
やはりシンプルであればあるほど説得力というものが増すものだと実感する。



先に述べた一筆書きのような鋭利な痕跡をモチーフにした
その名も「scribble(走り書き)」という作品の展示には
作品そのもののテンションとギャラリーが持つ“気”の快い共鳴感が
ホワイトキューブ冥利ともいえる空間を見事に作り出している。
或る一面にはあえて展示せずに“抜き”の間を作り、
さらにギャラリーのロゴをレリーフにしてみせるといった
軽妙な遊び心も伺えて、
このギャラリーがいかに白子作品を丁寧に
扱っているかがわかる。
漆の可能性を様々なものに媒介しながら展開する
今どきの現代美術作品の中において、
白子さんの抑制の効いた官能的なまでのアプローチは
いつ見ても奥の方からじわっとソソる造形美を
観る者の心に焼き付ける。