「 流転 〜 奥田 誠一 個展」
Category : 現代美術シッタカぶり
2013/7/26→8/4【 KUNST ARZT 】
ほとんどのギャラリーが夏休みに入りそうな週末。
毎年この頃になると見逃した展覧会のことが脳裏をかすめ、
なんだか落胆したり、寂しかったり、そんな気分になります。
この個展もここでの夏休み前最後の展覧会です。
それも最終日にしか行けず、っと済まないなぁと思ってしまいます。
(この下書きに取りかかってから今日ですでに1週間が経過…)



アップ画像


奥田さんは残念ながら存じ上げなかった作家さんで
サイトの紹介で見た作品の画像に軽い目眩を覚えました。
なんでも地震系(地面掘り起こし)ランドアーティストとのことです。
その作品については後ほど…ということで
今回は平面作品と木の彫刻作品です。
メインの作品は2×6mの大作で、
バーナーで焼いた和紙を何層にも貼り重ねた作品です。
和紙ですから薄らと下の層が見えます。
この作風は発表してから現在まで7年間取り組まれているもので
2009年に「全国和紙画展」に於いて金賞を受賞されているのは
おそらくはこの「流転」のシリーズ作品なのでしょう。
内容を検索してみますと、美濃和紙の里会館を会場に
今年で26回を数える公募展です。
アート部門と和紙絵部門があって、条件がはっきりしています。
和紙に描いた、あるいは刷ったものは全て対象外となるようです。
いかに和紙の持ち味をいかした表現であるかに焦点をあてたもので
その伝でいくと正に受賞が頷けます。
見ようによって様々なテーマや表情が浮かび、また消えていく。
薄やかな和紙の奥ゆかしい風合いと、焦げた匂いさえ漂ってきそうな気配の
取り合わせがとても絶妙で、なお面白いのは“燃やす”という行為よりも
やはり和紙への重力が勝っている点で、
この作品が一方的、ないしはエキセントリックな
表現方法に訴えたものではないことに気付かされます。
燃えた部分がいわゆる成せるがままのエッジとして
目に飛び込んでくるのは当然なのですが、
これほどに一つの筆法として奥田さんが追求されるのは
やはり、そこに混沌とした現実世界を映すからでしょうか。
消えゆくものと生まれるものの間にあるもの、
その運命的な繋がりが、この現世を支えている根源なのかも知れません。
…と、ここまで書いて、
やはり地震系ランドアーティストとしての奥田さんに
強烈なシンパシーを感じ、またその制作力にちょっとおののいてしまう僕は
やはり書かずにいられない興味を抱いています。
「地面に手を入れる」ということに作家としてのある覚悟を見てしまうのは
僕だけでしょうか。
「変なことしてるんですけどねぇ、ハハハ」と言われる奥田さんは
滋賀県の或る高校の美術科教諭をなさっています。
こんな作品を作る人が高校の美術の先生なら、さぞかし愉しいだろうなぁなんて思います。
あまり作品についてあれこれと言っても、
なにせ現物を目にしていない者はそれなりのことしか書けません。
だからこの写真(会場でいただいた奥田さんの仕事を紹介した冊子からのものです)を
このブログを見ているあなたと共有したい、そんなつもりでいいと思っています。
作品がどのような環境にあるか、天気、温度、湿度、そのような空気を
感じてこそ語れるものがあるはずだからです。
目の前におられる奥田さんは実に紳士的で、整然とした風情を醸し出していましたので、
やはりこの大胆な作品を見て「不思議なことを考えて、粛々と実行に移す人」という
断定にまで至らないというのが正直なところです。
やはり作家さんというのはどことなく浮世離れしています。
これらの作品は期間限定もの(完成したら元通りに戻すことが制作の絶対的条件だそうで)
だからこそ意味があるのでしょうが、
目撃するチャンスがあるならば、大げさではなく、
生きているうちに、この目に焼き付けておきたいと切に思っています。
冊子表紙にある奥田さんの言葉です。
「人の持つ、「大地は、平で動かぬもの」というイメージは、実は人の都合だけを優先したものです。そのイメージを覆そうと、野外でだまし絵的な造形作品を制作しています。「人は自然界の様々なバランスの中で生かされている。そのことを常に意識して生活しなければならない」というのが作品のコンセプトです。1995年、阪神淡路大震災が発生、そして2011年、東日本大震災が発生しました。現実の自然のエネルギーの凄まじさに、慄きました。震災の経験からできた作品があります。サブタイトルが「封」です。4本の土の塊が、井桁状に互いに抑え合ってバランスを保っています。「大地よ、静まれ!」の祈りを込めました。」

滋賀県大津市 滋賀大学教育学部(1983)

滋賀県甲賀市信楽 滋賀県立陶芸の森(1992)

滋賀県草津市ロクハ公園(1995)

「封」滋賀県東近江市 愛郷の森(1996)

滋賀県東近江市 八日市文化芸術会館(2004)
ほとんどのギャラリーが夏休みに入りそうな週末。
毎年この頃になると見逃した展覧会のことが脳裏をかすめ、
なんだか落胆したり、寂しかったり、そんな気分になります。
この個展もここでの夏休み前最後の展覧会です。
それも最終日にしか行けず、っと済まないなぁと思ってしまいます。
(この下書きに取りかかってから今日ですでに1週間が経過…)



アップ画像


奥田さんは残念ながら存じ上げなかった作家さんで
サイトの紹介で見た作品の画像に軽い目眩を覚えました。
なんでも地震系(地面掘り起こし)ランドアーティストとのことです。
その作品については後ほど…ということで
今回は平面作品と木の彫刻作品です。
メインの作品は2×6mの大作で、
バーナーで焼いた和紙を何層にも貼り重ねた作品です。
和紙ですから薄らと下の層が見えます。
この作風は発表してから現在まで7年間取り組まれているもので
2009年に「全国和紙画展」に於いて金賞を受賞されているのは
おそらくはこの「流転」のシリーズ作品なのでしょう。
内容を検索してみますと、美濃和紙の里会館を会場に
今年で26回を数える公募展です。
アート部門と和紙絵部門があって、条件がはっきりしています。
和紙に描いた、あるいは刷ったものは全て対象外となるようです。
いかに和紙の持ち味をいかした表現であるかに焦点をあてたもので
その伝でいくと正に受賞が頷けます。
見ようによって様々なテーマや表情が浮かび、また消えていく。
薄やかな和紙の奥ゆかしい風合いと、焦げた匂いさえ漂ってきそうな気配の
取り合わせがとても絶妙で、なお面白いのは“燃やす”という行為よりも
やはり和紙への重力が勝っている点で、
この作品が一方的、ないしはエキセントリックな
表現方法に訴えたものではないことに気付かされます。
燃えた部分がいわゆる成せるがままのエッジとして
目に飛び込んでくるのは当然なのですが、
これほどに一つの筆法として奥田さんが追求されるのは
やはり、そこに混沌とした現実世界を映すからでしょうか。
消えゆくものと生まれるものの間にあるもの、
その運命的な繋がりが、この現世を支えている根源なのかも知れません。
…と、ここまで書いて、
やはり地震系ランドアーティストとしての奥田さんに
強烈なシンパシーを感じ、またその制作力にちょっとおののいてしまう僕は
やはり書かずにいられない興味を抱いています。
「地面に手を入れる」ということに作家としてのある覚悟を見てしまうのは
僕だけでしょうか。
「変なことしてるんですけどねぇ、ハハハ」と言われる奥田さんは
滋賀県の或る高校の美術科教諭をなさっています。
こんな作品を作る人が高校の美術の先生なら、さぞかし愉しいだろうなぁなんて思います。
あまり作品についてあれこれと言っても、
なにせ現物を目にしていない者はそれなりのことしか書けません。
だからこの写真(会場でいただいた奥田さんの仕事を紹介した冊子からのものです)を
このブログを見ているあなたと共有したい、そんなつもりでいいと思っています。
作品がどのような環境にあるか、天気、温度、湿度、そのような空気を
感じてこそ語れるものがあるはずだからです。
目の前におられる奥田さんは実に紳士的で、整然とした風情を醸し出していましたので、
やはりこの大胆な作品を見て「不思議なことを考えて、粛々と実行に移す人」という
断定にまで至らないというのが正直なところです。
やはり作家さんというのはどことなく浮世離れしています。
これらの作品は期間限定もの(完成したら元通りに戻すことが制作の絶対的条件だそうで)
だからこそ意味があるのでしょうが、
目撃するチャンスがあるならば、大げさではなく、
生きているうちに、この目に焼き付けておきたいと切に思っています。
冊子表紙にある奥田さんの言葉です。
「人の持つ、「大地は、平で動かぬもの」というイメージは、実は人の都合だけを優先したものです。そのイメージを覆そうと、野外でだまし絵的な造形作品を制作しています。「人は自然界の様々なバランスの中で生かされている。そのことを常に意識して生活しなければならない」というのが作品のコンセプトです。1995年、阪神淡路大震災が発生、そして2011年、東日本大震災が発生しました。現実の自然のエネルギーの凄まじさに、慄きました。震災の経験からできた作品があります。サブタイトルが「封」です。4本の土の塊が、井桁状に互いに抑え合ってバランスを保っています。「大地よ、静まれ!」の祈りを込めました。」

滋賀県大津市 滋賀大学教育学部(1983)

滋賀県甲賀市信楽 滋賀県立陶芸の森(1992)

滋賀県草津市ロクハ公園(1995)

「封」滋賀県東近江市 愛郷の森(1996)

滋賀県東近江市 八日市文化芸術会館(2004)