「 う み つ ち ひ と そ ら 〜 亀谷 彩 漆作品展 」
Category : 現代美術シッタカぶり

2014.4.15〜4.27 【ギャラリー恵風 1F】
伊太利の国々を巡り わたしは想う
山野をへだて 孤島のように街がある
さながら大海原に浮かぶ舟のようにと
その舟は あまたの旅人をはこび
その舟は あまたの波濤をこえた 舟に誘われ
異国の空の下 時を翔る
これは5年前に初めて亀谷さんの作品を拝見した時に
カードに書かれていた散文です。
この頃に現代美術のブログを始めました。
仕事の合間に覗いてみたギャラリーで
こんなにも小さな作品の中に思いがけないほどの
豊かな世界が広がっていたことを今でも鮮明に覚えています。
その時の文章と作品の印象があまりにもフィットしていて
決して広いとはいえない会場で
亀谷さんの作品は楚々としつつ、凛とした風情を放っていました。
その後は中々作品を見る機会に恵まれず、
今回は久しぶりな作品との出会いとなりました。
5年前の春、偶然なのか、漆の作品が立て続けに展示されていて
勝手に「ジャパン週間」と銘打って、いそいそと出かけていました。
その時に漆だけが持ち得るテクスチャーに
全くの門外漢は驚きと涼やかな衝撃を食らったものです。
ただ置いてあるだけなのに、そこに独特の浮力を感じさせ、
今にも動き出す様なしつらえ。
亀谷さんのハレの世界はとても慎ましやかで
成熟と洗練が濃縮されたミニマルな印象がとても強く、
そして尚、上品な軽(かろ)みが魅力です。
どこまでも滑らかで凪いだ海のような漆黒の表面。
停泊している舟は一体どこへ私たちを誘ってくれるのでしょうか。









追伸)このブログが作家氏に読まれて、FBでシェアしていただいたことに、まず恐縮。
でも僕自身は、何も書けていないじゃないか、という反省。
亀谷さんには「書けないほどにいいのです」という類いの言い訳をしましたが、
いかんせん表現力の乏しさにさらに猛省。
小さいものに宇宙を作り出すというのは、実は大変な引き算をしていく工程があって、
つまるところ、その引き方の妙味が作品に顕著に反映されるとシッタカぶります。
今回は自然物、つまり有機的な素材との交配も垣間見えたり、
牧歌的なイメージが立ち上がってきたり、
何よりも率直なモノづくりへの姿勢を堪能しました。
漆というのは、単なる手段、手立ての一つではなく、
膨大な時間を費やしてもなお、漆としての完成形をひとすらに追い求める
ストイックな印象が常にあります。
何度も書いてきたことですが、
表現しようと思う前にすでに技術的にクリアしていかねばならないことが
立ちはだかっているのです。
だから自己流で画法筆法を支持体に叩き付けるんだというような
身勝手さを許さない厳しさと向かい合っていけるかという覚悟すら感じます。
亀谷さんの作品にそういった「気負い」を感じないのは
そこにある優しさのようなものかとも思います。
楽観的とはまた違う、微笑むように添うように作品を育てている感じがして
やはり母となった作家が見知る、想い得る世界なのかなとも思います。