fc2ブログ

「 野田 涼美 展 〜 PTP Bijoux Fantasies 」

Category : 現代美術シッタカぶり
2014.6.28〜7.12 @ GALLERYGALLERY EX

かつて広告制作に携わっていた頃のこと。展示会のDMです。
レイアウトもタイポグラフィーもクライアントのオーダーにかなったものが出来、
さて色指定となった段階でクライアントのテキスタイルデザイナーから
どうしても違うと何回もダメ出し。
僕たちの使う特色(4版の掛け合わせではない色・単色)の色見本を
持って行っても、まだ納得しない様子。
結局、先方の色見本で色指定をしたのですが、
グラフィックデザインの「色彩選択」というものが
「色見本」というツールによって縛られていることを痛感しました。
先方のデザイナーはあらゆる素材から色のニュアンスを
探ろうとし、またそのために時間を惜しみませんでした。
結果、番号のない色チップが版下に添付され、
絶妙な色合いの指定となって色校正にまわされました。
印刷されたDMを見て、しばらく黙ってしまいました。
これが僕が仕事を通じて出会ったテキスタイルの
テキスタイルたる所以を初めて知ったエピソードです。

さて、野田さんです。
野田さんの作品にある共通した特徴を見つけます。
それは「明るさ」です。
野田さんの作品を見ていると、なんだかオトナだなぁと思うのです。
理由ははっきりとわからないのですが
とても安心して見ていられる「まろやかさ」があります。
愉しい、というニュアンスを実によく知っているひとです。
今回は二つの部屋での個展です。
一つは水をテーマにしたもの。
「who can possess water?」…誰が水を所有できるか?

ここで…実に申し訳ないのですが…実はお隣りの部屋の作品がお目当てでした。
タイトルは「PTP Bijoux Fantasies」
PTPとはあのクスリのシートです。プチっと出すアレです。
野田さんのご家族や友人たちが飲む多量のクスリ。
いわゆる定期薬です。
決まった時間に飲めなかったり、一回服薬をスキップしてしまうと
本人は暗澹たる気持ちになったりします。
それほどに私たちは自身の慢性的な疾患において
クスリを頼りに生きているわけです。
「健康への強い希望はクスリを宝石に変える」
ステートメントの締のフレーズは、やはり野田さんならではの
「明るさ」に満ちていました。
「一目一針、皆の快復を願いつくりますが、出来上がったものは
恐ろしいファンタジーとなってしまいました」
しかしその“恐ろしいファンタジー”のなんと美しいことよ!
色々な方に声をかけながら今も集めているPTPですが
実は僕も相当数の空のシートがあります。
別にコレクションでもなく、これを使って作品(と呼べるかどうかは別として)
を作りたいという欲求がもくもくと或る日湧いたのです。
最初は家族や知人に頼んでみましたがどうにも集まらない。
そこで職場である施設のナースに頼んでストックしておいてもらいました。
(でもナースは一向に作品らしきものが出来ないので今の
収穫はやはり家族と親族(!)からというのが現実です)
はじめて野田さんのフェイスブックでのカバーを見た時に
心の中で、あっと声があがった(ように記憶しています)のです。
ですから今回は何がなんでも見ておかねばと思いました。
中には乳がんの服薬としてのかなり大きなPTPもあって驚きと共に
服薬される方だけが知る気概や希望、切たる思いが伝わってくるようで
こんなにも軽いのに、とてもずっしりとした手応えが感じられます。
クスリは決してネガティブなイメージだけで語ることのできない、
野田さんの言う「宝石」なのです。
そして僕にとってはMY ARTのきっかけとなる貴重な材料でもあります。
いつか、いつかと思うだけでは何にも形にはならないなという決意を
改めて再確認することができました。
クスリを支えに生きることに真剣に向き合う人が居て、
クスリによって一喜一憂する人が居て、
それをこうしたカタチにする野田さんが居て…
笑い飛ばせるほどのキラキラとしたファンキーなART、
やっぱり野田さんです。

P7060009.jpg

P7060006.jpg

P7060007.jpg

P7060005.jpg

P7060004.jpg

P7060003.jpg

P7060002.jpg

58カ国語に翻訳
English
お越しいただきありがとうございます

ナミキ・キヨタカ

………………………………………
アート・ドキュメント・ブック・
ミュージック・演劇・ダンス・
朗読・時事・ひがみ・そねみ・
やっかみ・おせっかい…
などなどシッタカぶって書きちらかしては
ゆらゆらと過ごしております。
言いたがり、やりたがり、ノリたがりな
のんのんとしたブログにお越しいただき
ありがとうございます。
facebookもよろしくです。
………………………………………

ここから、また…
最近の書き散らかし…
こんなこと書いてます
こちらへもどうぞ!