「 Reading aloud ~ 川中 政宏 」
Category : 現代美術シッタカぶり

2017.03.21~04.02【 Art Spot Krin 】
川中さんの創意の中にある「穏やかな視座」は、
作品化された後の余韻、
つまり鑑賞者にとってのタイムラグにあると思います。
どの作品も独特の優しさ、柔和さが感じられるんですね。
例えばトゥーランドットの楽譜作品は
連弾されるそれぞれの音を録音したテープの磁気部分を粉末にして
実際の音符に塗る、という作業としては実に明解なんですが
「想像される臨場感を持ち帰る」という感覚を与えます。
同じく朗読されたテキスト≒ページの文字に、
溶いた粉末を“置いて”いったものや、
読まれたページ分の断面を見せるオブジェ、
本そのものを「染料化した磁気」に浸けるという作品が登場します。
朗読時に揺れるページを見て、
自分の声が文章や本そのものに染み込んでいくというセンシティブな感覚は、
しかし誰もが共感するところであり、
昨今のテーマである「記録された音が媒介する想いとそれに伴う状況」の
数々の展開は
決して作品をメランコリックな風情にさせない、
静かな思惟に満ちたものに仕上げています。








